「インプラントは絶対にだめ」と言われる理由とは?

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歯科コラム/2022年10月3日

「インプラントは絶対にだめ」と言われる理由とは?

失った歯を補う装置としてインプラントが選ばれることが非常に多くなりました。それはインプラント治療にたくさんのメリットがあるからです。その一方で「インプラントは絶対だめ」という言葉も耳にすることがあるため、混乱してしまう方もいるでしょう。そこで今回は「インプラントは絶対だめ」と言われる理由を中心に、この治療法の特徴を詳しく解説します。

「インプラントは絶対にだめ」と言われる理由

インプラントには、次に挙げるようなデメリットを伴うことから、「インプラントは絶対だめ」と言われることがあります。

【理由①】外科手術のためリスクがある

失った歯の治療法としては、ブリッジ・入れ歯・インプラントの3つの選択肢が用意されていますが、この中で特に、外科手術が必要となるのはインプラントです。
インプラントでは、チタン製のネジである人工歯根を顎の骨に埋め込まなければならないからです。その際に、重要な血管や神経を損傷したり、細菌に感染したりするなどのリスクを伴います。ですから、重篤な病気を患っているなど、全身状態が悪い人にはあまりおすすめすることができない治療法といえます。

【理由②】あごの骨が弱い・少ないと手術が失敗する可能性がある

インプラント治療の要(かなめ)となるのは、人工歯根です。チタンで作られた人工歯根を顎の骨に埋め込むことで強固な土台を獲得することができ、天然歯と同じような噛み心地が得られます。ただし、顎の骨が弱い、もしくは少ないと人工歯根が定着せずに手術が失敗に終わることもあり得ます。インプラント治療が得意な歯科医院であれば、不足した骨を補う処置などを行えるため、本来であれば適応外となるケースでも、安全に手術を実施できることもあります。

【理由③】基礎疾患を持っていると手術を断られるケースがある

糖尿病や高血圧症、血液の病気などを患っていると、インプラントの手術を断られることがあります。そうした基礎疾患は術中に全身状態を悪くする恐れがあるからです。具体的には、血が止まりにくくなったり、傷の治りが遅くなったりする病気は、インプラント手術が難しくなります。もちろん、糖尿病や高血圧症を患っていたとしても、それらの症状をコントロールできている状態であれば問題なくインプラント手術を行えます。ですから、最終的な判断は、精密検査等を行ってからでなければ下せません。

【理由④】治療期間が長い

インプラントは、従来法と比較すると治療期間が長いというデメリットがあります。ブリッジや入れ歯なら1~2ヶ月程度で治療が完了するのですが、インプラントの場合は6~8ヶ月程度の期間を要します。ケースによっては10ヶ月以上かかることもあるでしょう。これはインプラント治療に人工歯根を埋め込むという処置が含まれるからです。

インプラントの手術自体は1時間程度で終わりますが、チタン性のネジが顎の骨に定着するまでには3~6ヶ月程度かかるため、全体としての治療期間が長くなるのです。つまり、インプラント治療の大半は「治癒期間」に使われることから、通院頻度はそれほど高くはありません。

【理由⑤】治療費が高い

インプラント治療は原則として保険が適用されません。費用を全額自己負担する自由診療となるため、従来法と比較すると治療費が自ずと高くなります。例えば、保険診療で入れ歯を作る場合は、5,000~15,000円程度の出費にとどまりますが、インプラントの場合は1本当たり300,000~400,000円程度かかります。
とはいえ、インプラント治療ではそもそも原材料費が高額な装置を使うだけでなく、極めて専門性の高い治療分野となっていることから、それに相応しい技術料等も発生してしまいます。そうした点も考慮すると、インプラント治療だけが極端に高い費用を設定しているわけではないことがわかります。

【理由⑥】治療後にメンテナンスが必要

インプラントは寿命の長い装置です。標準的な入れ歯が3~5年で使えなくなることが多いのに対し、インプラントはほとんどのケースで10年以上使い続けることが可能です。過去にはインプラントを40年以上使い続けたケースもあるくらいですが、治療後のメンテナンスを怠ると、寿命は大きく短縮されることでしょう。

インプラントは、見た目や噛み心地が天然歯にそっくりな装置ですが、あくまで人工物であり、さまざまなトラブルに見舞われる可能性もあります。とくに注意が必要なのが「インプラント周囲炎」と呼ばれる病気です。インプラントは天然歯よりも歯周病リスクが高く、周りの歯茎や顎の骨に炎症が起こりやすいのです。治療後のメンテナンスを怠っていると、そうした歯周組織の異常に気付くのが遅れてしまい、最終的にはインプラントが抜け落ちます。その他、上部構造である人工歯の破折やネジの緩みなどもメンテナンスで早期に発見し、適切に対処する必要があります。そのような治療後のメンテナンスを5年、10年、15年と続けていくことに不満を感じる方もいらっしゃることでしょう。

【理由⑦】金属アレルギーを起こす可能性がある

インプラントに用いる人工歯根は、チタンという金属で作られています。チタンは生体親和性が高く、金属アレルギーの原因となることは滅多にないのですが、そのリスクはゼロではありません。また、土台となるアバットメントや人工歯に相当する上部構造に金属を使った場合は、金属アレルギーのリスクが生じます。最近では人工歯根から上部構造まですべて金属ではない素材を用いるインプラント治療も開発されていますが、決して万能ではないので、金属アレルギーのリスクをゼロにしたいという方は、メタルフリーのブリッジや入れ歯がおすすめといえます。ちなみに、インプラント治療で用いるチタンは、心臓のペースメーカーや人工関節にも使われている素材であり、その安全性は古くから保証されています。

【理由⑧】再治療が難しい

すべての医療行為に共通して言えるのは、必ず失敗するリスクも伴うということです。それは優れた治療結果が得られるインプラントも例外ではありません。そして、インプラントの場合は、術中や術後のトラブルに見舞われ、顎の骨に人工歯根を定着させることができなかった場合の再治療が難しいというデメリットも伴います。これは繰り返し装置を作り直せる入れ歯とは大きく異なる点です。

インプラント治療が失敗する主な原因は、顎の骨の状態が悪くなることです。インプラント周囲炎などを患って人工歯根が脱落してしまうと、再びもとに戻すのは困難といえます。ケースによっては再生医療などを組み合わせることで再治療が可能となることもありますが、基本的には入れ歯治療などに切り替えることになるでしょう。これもまたインプラントが絶対だめと言われる理由の一つです。

インプラントのメリット

ここまで、インプラント治療のデメリットに焦点を当てて解説してきましたが、メリットについてもいくつかご紹介しておきます。

【メリット①】根元から歯を取り戻すことが出来る

歯は、お口の中に見えている歯冠(しかん)の部分だけに意識が行きがちですが、歯茎の中に埋まっている歯根(しこん)も同等、もしくはそれ以上に重要といえます。なぜなら、歯根さえしっかり残っていれば、歯冠がボロボロになっても被せ物を装着して歯としての機能を継続させることが可能だからです。インプラントでは、歯冠はもちろんのこと、歯根まで回復できる点が従来の治療法とは大きく異なります。根元から歯を取り戻すことが出来るため、噛んだ時の力を顎の骨で支えられます。

【メリット②】周囲の歯への負担が少ない

従来法である入れ歯やブリッジには人工歯根がないことから、口腔内への固定は残った歯に頼らざるを得ません。とくにブリッジは両隣の歯を大きく削らなければならず、支えとなる歯の寿命は確実に短くなります。また、噛んだ時の力も残った歯で支えなければならないので、お口全体の健康維持という観点ではマイナスとなるポイントが非常に多いです。一方、インプラント治療には、人工歯根という強固な土台が存在しており、周囲の歯に頼る必要がありません。顎にも適度な力が加わることで、「顎骨が痩せる」という現象も抑えられます。歯科医院ではそうした点も踏まえて、インプラント治療をおすすめすることが多いです。

【メリット③】審美性に優れている

インプラントは、天然の歯列に自然と調和します。おそらく、多くの人は一見どこにインプラントを埋め込んだのかわからないことでしょう。これはインプラントに余計なパーツが付随しておらず、人工歯根と人工歯、それらをつなぐアバットメントだけで構成されているからです。その構造はほぼ天然歯と同じなので、治療後の見た目にも違和感が生じにくく、自分の歯と見分けがつかなくなります。一方、入れ歯には金属製の留め具であるクラスプや歯茎を覆う部分の義歯床(ぎししょう)などが付随していて、見た目があまり良くありませんよね。こうした点もインプラントのメリットの一つとして挙げられます。

インプラントにするかどうかを決める際の判断ポイント

インプラントに関するメリット・デメリットについては深くご理解いただけたかと思いますが、それだけでインプラント治療にするかどうかを決めるのはまだ早いです。今現在、インプラント治療を検討中の方は、次の2つのポイントにも着目した上で最終的な判断を下すようにしてください。

【ポイント①】インプラントと他の治療法を比較する

上述したように、失った歯の治療法としては、インプラント以外にブリッジや入れ歯が挙げられます。これらの治療法のメリット・デメリットについても詳しく知ることで、自分自身に最善と言える治療法が見つかることかと思います。

ブリッジのメリット・デメリット

ブリッジのメリットとしては、保険が適用される、外科手術が不要、固定式なのでお手入れが楽、噛み心地や見た目は入れ歯よりも良い、といった点が挙げられます。ブリッジのデメリットとしては、支えとなる両隣の歯を大きく削らなければならない、噛み心地や見た目はインプラントに劣る、歯を失った部分の骨は徐々に痩せていく、といった点が挙げられます。

入れ歯のメリット・デメリット

入れ歯には、保険が適用される、外科手術が不要、故障した時に修理しやすい、ほとんどの症例に対応できるといったメリットが挙げられます。入れ歯のデメリットとしては、噛んだ時にずれる・外れる、故障しやすい、見た目が良くない、装着時の違和感が大きい、口内炎ができやすい、顎の骨が痩せていく、残った歯に大きな負担がかかる、といった点が挙げられます。

このように、ブリッジや入れ歯にもそれぞれメリットがあり、すべてにおいてインプラントが優れているわけではないのです。つまりは、失った歯の治療に何を求めるかによっても、最善と言える方法が変わってくるといえます。

【ポイント方法②】インプラントが得意な歯科医院でカウンセリングを受ける

インプラントを検討している方は、インプラント治療が得意であったり、診療実績が豊富であったりする歯科医院のカウンセリングを受けるようにしてください。インプラントは歯科医師免許を持っていれば誰でも行うことができるものの、治療の質は歯科医院によって大きく変わります。それはインプラントの寿命にも直結するようなことなので、必ず意識するようにしてください。インプラント治療が得意な歯科医師がいるだけではなく、精度の高いインプラント治療を提供できる設備が整っていることも重要なポイントといえます。

まとめ

今回は、インプラントは絶対だめと言われる理由について解説しました。かなりたくさんのポイントを挙げたので理解するまでに時間がかかるかと思いますが、インプラント治療で失敗や後悔しないためにも参考にしていただけたら幸いです。当然ではありますが「インプラントは絶対にだめ」ということはなく、それぞれのお口の状態やニーズによって最善といえる治療法は変わってくるものです。