差し歯の特徴や費用:保険適用と保険適用外に分けて解説
歯の頭の部分である歯冠(しかん)を大きく損ねるようなことがあったら、差し歯を作らなければなりません。
専門的にはクラウンと呼ばれる装置で、実にたくさんの種類が用意されています。
ここではそんな差し歯の種類や特徴、費用を保険適用と保険適用外に分けてわかりやすく解説します。
保険適用の差し歯と保険適用外の差し歯の違い
保険適用の差し歯と保険適用外の差し歯には、費用・仕上がり・保証という3点において違いが見られます。
違い①治療にかかる費用
差し歯の治療にかかる費用は、当然ですが保険適用の方が安いです。保険適用の診療では、患者さんの負担が1~3割となっています。一方、全額自己負担となる保険適用外の診療は自ずと支払う費用も高くなります。ですから、経済面を重視するのであれば、保険適用の差し歯の方が適しているといえます。
違い②仕上がり
保険適用の差し歯は、使用できる材料や治療にかけられる時間・期間にも制限が加わるため、保険適用外の差し歯ほど仕上がりは良くありません。差し歯の見た目や噛み心地の良さなどを追求したいのであれば、保険適用外の差し歯の方が良いです。
自費診療ではセラミックやジルコニアなど、審美性・機能性に優れた材料を自由に使うことができます。とくに前歯の変色や欠損を補うのであれば、審美性の高いセラミックが推奨されます。保険診療では基本、レジンや銀歯しか使用できないので、審美性も自ずと低くなります。ただ、奥歯の治療であれば、レジンや銀歯でもそれほど気にならないことが多いです。
違い③保証
保険診療では、差し歯の費用の中に「補綴物維持管理料」が含まれており、治療後2年間は無料で修理をしてもらえます。一方、保険適用外の差し歯は、歯科医院によって保証の有無が異なります。差し歯の故障に対して無償で対応してくれるところもあれば、再度、費用が発生するところもあります。その点は、治療を開始する前にきちんと確認しておきましょう。セラミック性の差し歯は1本でもかなり高額な費用がかかりますので、保証の有無はとても重要なポイントとなります。
保険適用の差し歯
保険適用の差し歯としては、次の4つが挙げられます。
保険適用①銀歯
歯科用合金で作られた差し歯で、見た目も金属色をしています。強度が高く、壊れにくくはあるのですが、見た目が良くなかったり、金属アレルギーや歯ぐきの変色であるメタルタトゥーのリスクがあったりするなど、デメリットも目立ちます。歯質との適合性もセラミックほどは高くないので、虫歯の再発リスクも存在します。ちなみに、銀歯は奥歯に適応されるもので、保険診療であっても前歯は白い材料を用いることができます。
保険適用②硬質レジン前装冠
金属の土台に硬質レジンという素材を貼り付けた差し歯です。表側からは白い歯に見えますが、裏側は金属色がむき出しとなっています。主に前歯の治療に用いられる差し歯で、銀歯よりも審美性が高いです。ただし、ベースは金属なので金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクは存在します。
保険適用③硬質レジンジャケット冠
硬質レジンで作られた差し歯です。硬質レジン前装冠とは異なり、金属の部分が存在していません。そのため、金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクもなくなります。歯ぐきの部分に金属色が透けて見えることもなく、審美面において非常に優れた治療法といえます。ただ、保険適用されるのは前歯の治療のみです。また、銀歯や硬質レジン前装冠ほど丈夫ではないというデメリットもあります。
保険適用④CAD/CAM冠
CAD/CAMとは、コンピューター上で差し歯を設計し、専用の機械でブロックを削り出すシステムです。保険適用では純粋なセラミックではなく、少し硬めのレジンが用いられます。現状では、前歯から奥歯まで、ほぼすべての歯に適応することができます。その他、白くて本物の歯のように見える、シリコーン印象材による不快な型取りが不要、その日に差し歯が出来上がるなどのメリットがあります。保険適用なので費用は安いです。
保険適用外の差し歯
保険適用外の差し歯には、次のような種類があります。
保険適用外①メタルボンド
メタルボンドとは、金属の土台にセラミックを盛り付けた差し歯です。表側からはセラミック歯に見えるため、銀歯とは異なり見た目は良好です。金属の部分は強度が高く、壊れにくいですが、セラミックの部分は強い衝撃などで壊れるおそれがあります。高い審美性が要求される前歯に使われることの多い差し歯といえます。
保険適用外②ジルコニアセラミッククラウン
ジルコニアセラミッククラウンとは、極めて高い強度を誇るジルコニアと、一般的なセラミックを併用した差し歯です。中心部がジルコニアで構成されており、表面にセラミックを焼き付けます。そのため、高い強度と審美性を兼ね備えた人工歯を装着することができます。金属は一切使用しないため、金属アレルギーや歯ぐき変色であるメタルタトゥーは起こりません。ちなみに、ジルコニアはとても硬い素材なので、強い力がかかりやすい奥歯にも使用することができます。
保険適用外③ゴールドクラウン
ゴールドクラウンとは、金(ゴールド)を使った差し歯です。見た目は金色をしているので目立ちやすく、前歯の治療にはあまり向かない。セラミックと比較して虫歯や歯周病リスクが高まるというデメリットがあります。ただ、ゴールドは金属アレルギーが起こりにくく、歯ぐきの変色を招きにくいというメリットがあります。もちろん、強度も極めて高いです。
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保険適用外④オールセラミック
オールセラミッククラウンは、土台も表側もすべてセラミックで構成された差し歯です。保険適用外の差し歯の中で最も美しい部類に入ります。ただし、強い衝撃で割れやすいというデメリットがあり、奥歯の治療にはあまり向いていません。基本的には、高い審美性が要求される前歯の治療に用いられます。
保険適用外⑤ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミックとは、セラミックとレジンを掛け合わせた素材です。レジンよりも美しく丈夫ではあるものの、純粋なセラミックにはいろいろな面で劣ります。保険のクラウンよりも虫歯や歯周病リスクが少なく、オールセラミックやジルコニアセラミックよりも費用が安くなるというメリットが得られます。
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保険適用外⑥フルジルコニアクラウン
フルジルコニアクラウンとは、その名の通りジルコニアのみを使用した差し歯です。保険適用外の治療の中で最も強度に優れた差し歯といえるでしょう。保険のクラウンよりも虫歯や歯周病リスクが低いのも特徴です。ただし、オールセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンと比較すると、審美性に劣ります。
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見栄えが気になる前歯には保険外の差し歯がオススメ
前歯の差し歯の治療は、機能性はもちろんのこと、審美性も追求する必要があります。
例えば、保険適用の前歯の治療では、使用できる素材に限りがあるため、審美性の追求にも限界があります。
その点、保険適用外の治療であれば、オールセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンなど、審美性をとことんまで追求した前歯の差し歯治療が可能となります。
ですから、見栄えが気になる前歯には、保険外の差し歯がおすすめといえます。
差し歯の治療前にすること
今現在、差し歯を入れようと考えている方は、治療を選択する前に必ず以下の3点を行いましょう。
治療前①カウンセリングを受ける
差し歯の治療は選択肢が多く、どれがご自身にとって最善といえるかはわかりにくいです。そこでまずはカウンセリングでわからないことや知りたいことを質問しましょう。そうして不安な点や疑問点を解消しておくことが大切です。
治療前②保証を確認する
保険適用の差し歯には「補綴物維持管理料」含まれているため、2年間は無償で修理等を受けられます。一方、保険適用外の差し歯は歯科医院のよって保証内容が異なりますので、その点はしっかり確認しておきましょう。
治療前③差し歯治療の実績を見せてもらう
差し歯治療は、歯科医師の技術力によって結果も大きく変わってきます。過去の実績をみせてもらうことで、どの程度の差し歯を作ってもらえるのかもチェックできます。当然ですが、できるだけ実績豊富な歯科医師に治療を任せる方が良いといえます。