インプラント治療のリスクとは?歯科医院を選ぶ際のポイント等を解説
インプラントには極めて多くのメリットがあり、歯を失った際には、歯科医師でも第一に選択したいと思える治療法です。なぜなら、従来の入れ歯やブリッジでは代替できない機能がインプラントにはあるからです。ただ、インプラント治療には外科的処置が必須となっていることから、いくつかのリスクを伴います。今回はそんなインプラント治療のリスクを解説した上で、信頼できる歯科医院選びのポイントをご紹介します。
インプラント治療のリスク
インプラント治療には、以下に挙げるようなリスクを伴います。
リスク①人為的ミス
これはインプラント治療に限らず、医療全般に言えることですが、不十分な検査・診察、担当医の経験不足などによって人為的なミスが起こる可能性があります。後段の「インプラント治療で歯科医院を選ぶ際のポイント」を読んでいただくことで、その可能性を限りなくゼロに近付けることはできます。
リスク②歯周病菌への感染
インプラントは見た目も噛み心地も天然歯に酷似していますが、あくまで人工物です。人工歯と人工歯根との境目は汚れがたまりやすく、細菌の温床となりやすいです。また、チタン製の人工歯根と顎の骨との間に「歯根膜(しこんまく)」という血管や神経などで構成された組織がないため、細菌感染が起こりやすくなっています。インプラントには「インプラント周囲炎」という特別な歯周病があるのはそのためです。インプラントを埋め込んでいる部分が歯周病菌に感染すると、装置そのものを維持することが難しくなり脱落を招きます。
リスク③抜け落ちと骨への突き抜け
インプラント治療では、顎の骨の状態が極めて重要な要素となります。骨密度が低いと人工歯根であるインプラント体が抜け落ちたり、骨量の不足で上顎洞(じょうがくどう)などに人工歯根の先端が突き抜けたりすることがあるため十分な注意が必要です。歯科用CTによる精密診断を行い、骨の状態を正確に把握することで、人工歯根の抜け落ちや上顎洞への突き抜けなどを回避することができます。
リスク④見た目に問題が起きる
インプラントは、噛んだ時の力を人工歯根と顎の骨で受けとめることができるため、歯を失った部分の骨の吸収(痩せる現象)が起こりにくくなります。しかし、骨が痩せる現象を完全に防止できるわけではないので、年月が経つにつれて徐々に骨量が減っていってしまいます。その結果、インプラントの人工歯が長く見えるようになったり、連結装置であるアバットメントが透けて見えるようになったりすることがあります。
リスク⑤骨との結合がうまくいかない
骨密度が低下する骨粗しょう症を患っていたり、不適切な手術で骨の細胞が死んでしまったりすると、チタン製の人工歯根と顎の骨との結合がうまくいきません。そのため、骨粗しょう症を患っている人は、内科医との連携が必須となります。骨の細胞が死んでしまう現象は、知識と経験が豊富な歯科医師が執刀することでリスクを軽減できます。具体的には、ドリルで人工歯根を埋め込む際に、しっかりと注水することで摩擦熱による骨細胞の死滅を防げます。
リスク⑥糖尿病に疾患していると感染しやすい
糖尿病を患っている人は、歯茎のような末梢組織の血流が悪くなっています。血行が悪いと酸素や栄養素、免疫細胞の供給が滞るため、歯周病菌の感染が起こりやすくなり、インプラント治療が失敗するリスクも高いといえます。ただ、糖尿病にかかっていたとしても、治療によって病態が安定していれば、インプラント治療も安全に行うことが可能です。
リスク⑦脳血管の疾患を抱えていると脳梗塞を発症する可能性がある
過去に、脳梗塞を発症した経験がある方は、血液が固まりにくくなる「抗凝固薬(こうぎょうこやく)」を服用していることが多く、手術中に出血が止まらなくなるリスクがあります。また、手術によるストレスが引き金で、再び脳梗塞を発症する可能性もあります。
リスク⑧チタンアレルギー持ちだと金属アレルギーの症状を起こす
インプラント治療であごに埋め込む人工歯根は「チタン」で作られています。チタンは金属アレルギーが起こりにくい金属として有名で、医科の分野でも古くから人工関節の材料として広く活用されています。それでも極まれに「チタンアレルギー」を持っている方もいるため、インプラント治療も金属アレルギーのリスクがゼロだとは言い切れないのです。特に人工歯根の材料が「純チタン」ではなく「チタン合金」の場合は、その他の金属も含まれている点に注意しなければなりません。
インプラント治療の手術で起こる可能性があるトラブル
インプラント治療の手術では、以下に挙げるようなトラブルが起こる可能性があります。
トラブル①インプラントが適切に埋め込まれていない
事前の検査・診断が適切に行われていないと、人工歯根を埋め込む位置・角度・深さを誤ってしまうことがあります。その結果、重要な血管や神経を傷付けてしまい、術中の大量出血や術後の神経麻痺を招いてしまうこともあるのです。
トラブル②手術中に体調が急変する
インプラント手術は、心身への負担が比較的少ない手術となりますが、患者さまの全身状態によっては手術中に体調が急変することもあります。高血圧症や心疾患などを患っている方は特に注意が必要です。
インプラント治療で歯科医院を選ぶ際のポイント
ここまで、インプラント治療に伴うリスクについて解説してきましたが、以下に挙げる6つのポイントに着目することで、信頼できる歯科医院を選びやすくなります。インプラント治療に伴うリスクも最小限に抑えられることでしょう。
ポイント①歯科用CTスキャンがあるかどうか
安全性の高い、精密なインプラント治療を実施するためには、歯科用CTによる画像診断が必須となります。歯科用CTを導入していない時点で選択肢から外しても良いくらい、重要なポイントといえるでしょう。なぜなら、レントゲンでは平面(2次元)的な画像しか得られないからです。チタン製の人工歯根をあごに埋めるインプラント治療では、骨の幅・深さ・奥行きを正確に把握する必要があり、立体(3次元)的な画像が得られるCT撮影でのみそれが可能となります。歯科用CTによる精密検査が行えない状態でインプラント治療を進めていくと、手術中に神経や血管を傷つけるリスクが大きく上昇します。
ポイント②衛生管理が徹底されているかどうか
インプラント治療を実施する手術室はもちろん、器材の滅菌やスタッフの衛生管理が徹底されているか確認しましょう。外科手術では感染リスクを排除できないため、衛生管理が徹底されていることも必須条件となります。
ポイント③料金が明確かどうか
インプラント治療は、料金体系が不明確となっていることが多いです。「インプラント1本10万円で治療します」という格安インプラントを謳っている歯科医院もありますが、実際は人工歯根の費用しか含まれておらず、総額として30~40万円かかることも珍しくありません。ですから、インプラント治療の料金を明確に提示してくれているかどうかも信頼できる歯科医院選びでは重要なポイントのひとつとなります。
ポイント④事前相談・カウンセリングがあるかどうか
インプラントは従来法の入れ歯やブリッジとは異なる点が多々あるため、事前相談やカウンセリングが重要となります。カウンセリングがていねいで、質問にしっかり答えてくれる歯科医院を選ぶようにしましょう。
ポイント⑤インプラント治療の実績があるかどうか
インプラントは極めて専門性の高い治療分野です。過去の症例が多いほど、治療の精度も高くなるため、インプラント治療の実績豊富な歯科医院を選ぶことが大切です。具体的な症例数を公開している歯科医院を選ぶのがよいでしょう。
ポイント⑥アフターケアが充実しているかどうか
インプラントは治療後のメンテナンスが必須となっています。適切なメンテナンスを継続的に受けることで、インプラントの寿命を10年、20年と延ばしていくことができます。そのため、長期的なメンテナンスも含めたアフターケアが充実している歯科医院は頼りになることでしょう。