インプラントのアバットメントとは?種類・役割・装着のタイミング等を解説

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歯科コラム/2024年4月1日

インプラントのアバットメントとは?種類・役割・装着のタイミング等を解説

インプラントには「アバットメント」という部品が存在しています。一般的な詰め物や被せ物はもちろん、インプラントと同じ“失った歯を補う装置”であるブリッジや入れ歯にも見られないパーツなので、どのような役割があるのか気になっている方も多いことでしょう。

インプラント治療を成功させ、正常に機能させるために必須となるパーツ。それがアバットメントです。ここではアバットメントの種類や役割、装着のタイミングなどを詳しく解説します。

インプラントの構造

失った歯を補うインプラントは、以下に挙げる3つの部品で構成されています。

  • 上部構造
  • アバットメント
  • インプラント体

上部構造は人工歯、インプラント体は人工歯根としての役割を果たします。それらを連結するのがアバットメントです。インプラントには数多くのメーカーが存在しており、それぞれに異なるシステムや製品を提供しているのですが、基本となる構造は共通しています。ですので、インプラントを理解する上では、まず上部構造・アバットメント・インプラント体という3つの部品の存在について知っておく必要があります。インプラント治療ではどうしてもチタン製の人工歯根やセラミック製の人工歯根に意識が行きがちですが、実際には、これらを連結するアバットメントも非常に重要な役割を果たす部品です。

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アバットメントとは

アバットメントは、人工歯根であるインプラント体の上に装着する部品です。上部構造の土台は、インプラントにアバットメントを装着することによって、ようやく完成にすることになります。つまり、人工歯根にあたるインプラント体と人工歯に当たる上部構造を直接、連結することはできないのです。

インプラントの2回法では、2回目の手術でアバットメントを装着し、歯茎の中に埋め込まれた状態となります。アバットメントと上部構造は、ネジで固定するタイプとセメントで固定するタイプの2種類があり、それぞれに異なるメリットとデメリットがあることから、どちらかが絶対的に優れているとは言い難いです。

例えば、ネジで固定するタイプは、専用のドライバーがあれば自由に取り外せますが、審美性がやや低いのが欠点といえます。それはネジの部分をレジンなどでカバーしなければならないからです。

一方、セメントで固定するタイプは審美性に優れているものの、上部構造やアバットメントに不具合が生じた際の修理が難しくなります。いざアバットメントが故障して修理する必要性が出てきた場合は、上部構造を壊さなければならなくなることも珍しくありません。ちなみに、ワンピーススタイプと呼ばれるインプラントは、アバットメントとインプラント体が一体となっているため、手術を2回で終わらせることが可能です。

アバットメントの種類

種類①チタン合金

チタンやアルミニウムなどから構成されたチタン合金を使ったアバットメントです。強度や耐食性に優れるというチタンの特長を残しつつ、耐久性の高さも追求することができる材料です。金属としての性能が高いため、角度をつけたアバットメントの製作にも向いています。費用に関しては、純チタンよりもやや高くなります。

種類②金合金

金(ゴールド)は、生体親和性と展延性(てんえんせい)に優れた金属です。展延性とは、材料を柔軟に伸ばせる性質で、アバットメントの適合性を高めることができます。その一方で、金合金のアバットメントは、上部構造との連結部分で金属色が目立ちやすかったり、費用が高くなったりするなどのデメリットを伴います。

種類③ジルコニア

酸化ジルコニウムで構成されたジルコニアは、金属に匹敵する硬さを備えたセラミックです。詰め物や被せ物などにも使用される白色の材料で、アバットメントに使用する場合も高い審美性を確保できるというメリットがあります。金属アレルギーのリスクをなくす目的で、インプラント体とアバットメントの両方をジルコニアで製作することも可能です。

種類④純チタン

純チタンは、99%程度がチタンで占められている材料です。費用はチタン合金よりも比較的安く、加工もしやすいというメリットがある反面、チタン合金よりも耐食性や強度に劣るというデメリットも伴います。このように、同じチタン材料でもチタン合金とは違いが見られることから、インプラント体を純チタンで作っている場合は、アバットメントも純チタン製のものを選択するのが望ましいといえます。具体的には、同じ組成の金属で合わせることで、ひずみなどの異常が生じにくく、装置としての寿命も延ばしやすくなります。

アバットメントの役割

インプラントのアバットメントには、以下に挙げる5つの役割があります。

役割➀インプラント体を目立ちにくくする

人工歯根であるインプラント体はチタン製のものが一般的です。つまり、金属色がむき出しとなっているのです。歯周病で歯茎が下がったりしてその一部が露出すると、口元の審美性が大きく低下します。アバットメントに目立ちにくい材料を使用すれば、そうした審美性の低下を防ぐことが可能となります。

役割②人工歯とインプラント体を連結する

人工歯である上部構造とインプラント体の連結は、アバットメントが担う最も重要な役割です。上部構造とインプラント体の間にアバットメントが介在することで、高さの微調整が可能となります。アバットメントがインプラント体と一体となっているワンピースタイプだと、上部構造が破損した際に、インプラント体まで大きなダメージを負うことがありますが、ツーピースタイプならそうしたリスクを最小限に抑えられます。

役割➂上部構造の傾きを補正する

患者さんの顎の骨の状態によっては、チタン製のネジであるインプラント体を真っすぐ埋め込めないことがあります。インプラント体に角度をつけて埋入することになるため、そのままの状態では上部構造も傾斜してしまいます。そんな時に有用なのがアバットメントです。アバットメントの形態を調整すれば、上部構造の傾きを補正することができます。その結果、審美性も機能性も正常な仕上がりが期待できるでしょう。

役割④噛み合わせの高さを調整する

上部構造の高さは、インプラント体だけではなく、その他の歯にも大きな影響を与えます。例えば、上部構造の噛み合わせが高すぎる場合は、インプラント体に過剰な負担がかかり、顎骨との結合が失われてしまうことがあるのです。その前に上部構造が欠けたり、外れたりすることもあります。逆に、上部構造の噛み合わせが低すぎると、周りの歯に大きな負担がかかることになります。そうしたインプラントの噛み合わせは、アバットメントである程度、調整することが可能です。もちろん、アバットメントだけでなく、上部構造で噛み合わせの高さを調整することもできます。どちらで調整するかはケースによって変わってきます。

役割⑤インプラントの強度を高める

人工歯根と上部構造の間にアバットメントが介在することで、インプラントの強度を高めることができます。これはアバットメントがクッションのような役割を果たすからです。インプラント体とアバットメントが一体となっているワンピースタイプでは、そうした効果は期待できません。アバットメントの部分が破損した時点で、インプラント体も撤去しなければならなくなります。どちらかというとワンピースタイプの方が天然歯の構造に近いのですが、人工的な装置であるインプラントの場合は、歯を3つの部品に分けて装着した方が予後も良くなりやすいのです。

アバットメントを装着するタイミング

人工歯と人工歯根の連結装置ともいえるアバットメントは、インプラントの2回法における2回目の手術で装着することになります。

1回目の手術では、歯茎をメスで切開し、顎の骨にドリルで穴を開けて人工歯根であるインプラント体を埋め込みます。手術の最後には傷口を縫合して、3~6ヵ月程度、待機します。この期間にチタン製の人工歯根と顎の骨が結合する「オッセオインテグレーション」が起こるのです。

オッセオインテグレーションが正常に起こったことを確認したら、2回目の手術で改めて歯茎を切開して、インプラント体の上にヒーリングアバットメントを装着します。これはあくまで仮のアバットメントで、歯茎の状態が落ち着いてきたら、最終的なアバットメントを装着することになります。

アバットメントの装着で起こるトラブル

アバットメントは、インプラント体と上部構造をつなぐ部品ですが、その装着によってトラブルが起こることもあります。一般的には、以下の3つのトラブルが考えられます。

トラブル➀噛み合わせが悪くなる

アバットメントの装着に不具合があると、噛み合わせが悪くなる場合があります。そのためアバットメントの装着は適切に行う必要があるのです。噛み合わせが悪い状態は、上部構造やアバットメント、インプラント体に過剰な圧力がかかるため、早期に改善しなければなりません。ですからアバットメントと上部構造の装着が完了したとしても、噛み合わせの不快感などの症状が現れた場合は、早急に主治医へ相談しましょう。多くのケースでは、アバットメントや上部構造を調整することで、不具合を取り除けます。

トラブル②痛みが生じる

アバットメントの装着後に痛みを感じる場合は注意が必要です。
装置のどこかに何らかの異常があって、顎の骨にダメージが及んでいる可能性が高いからです。多くのケースでは、アバットメントの緩みが原因となって痛みが生じています。アバットメントが緩んでいると、噛み合わせが悪くなって人工歯根や顎の骨に大きな負担がかかるからです。その状態で噛み続けていると、上部構造やインプラント体が壊れたり、顎の骨に炎症が起こったりします。ちなみに、アバットメントの緩みは専用の器具を使うことで容易に改善できます。

トラブル➂インプラント体の脱落が起こる

アバットメント装着後に起こる最も深刻なトラブルは、インプラント体の脱落です。
顎の骨に埋入したチタン製の人工歯根が抜け落ちる現象で、インプラント治療そのものが失敗に終わったことを意味します。こうしたトラブルは、アバットメントの緩みや破損などが原因となりやすいです。やはり、連結装置であるアバットメントに何らかの異常が生じると、それが上部構造や人工歯根へと波及していってしまうのです。インプラント治療におけるアバットメントは、それくらい重要な部品であるということを知っておいてください。

まとめ

今回は、インプラント治療で使用するアバットメントという部品の種類や役割、装着のタイミングなどを解説しました。アバットメントは、上部構造とインプラント体とをつなぐ連結装置で、それらを守る役割も果たしています。本文でも解説した通り、アバットメントに不具合が生じると、それが人工歯根や顎の骨にまで深刻な悪影響を及ぼしかねないため、十分な注意が必要といえます。

これからインプラント治療を受ける人はもちろん、すでに治療を終えている人も、アバットメントの重要性についてはしっかり理解しておくようにしてください。インプラント治療後に上部構造やアバットメントの不具合が生じたら、できるだけ早く主治医に相談することが大切です。当然ですが定期的なメンテナンスも必ず受けるようにしてください。