インプラント治療の主な失敗例4選:原因も併せて解説
インプラントは高度な歯科治療であり、従来法にはないメリットをたくさんもたらしてくれますが、失敗するリスクも伴います。とくに外科手術を伴う点に不安を感じている方が多く、過去に起きた医療事故についても気になる方も多いようです。今回はそんなインプラント治療の失敗例を4つ取り上げ、原因も併せて解説します。
インプラント治療の主な失敗例4選
①インプラントが骨に固定されていない
インプラント治療の失敗例としてはまず「人工歯根(インプラント体)が顎の骨に固定されない」ケースが挙げられます。インプラント治療の要である人工歯根が定着していないので、明らかな失敗と判断できます。
【原因1】適切に埋め込まれていない
人工歯根であるインプラント体は、適切な位置・角度・深さに埋め込まなければ、顎の骨に固定されません。手術を担当する歯科医師の技術が未熟で埋入処置が不適切だと、顎の骨から人工歯根がはみ出るなどして治療が失敗に終わります。
【原因2】ドリルで骨にダメージを与えた
チタン製の人工歯根は、専用のドリルで埋め込みます。その際、ドリリングの速度が速すぎたり、冷却のための注水を怠ったりすると、摩擦熱で顎の骨が火傷を起こし、ダメージを負います。その結果、骨の細胞が死んでしまい、人工歯根と顎骨との結合がうまくできなくなります。
②インプラント周囲炎を起こす
インプラント周囲炎は、インプラント特有の歯周病です。インプラントを支える歯茎や顎の骨に炎症が起こり、組織の破壊をもたらします。インプラント周囲炎が進行するとインプラントを支えきれなくなるため、治療も失敗に終わります。
【原因1】メンテナンスが不十分
インプラント周囲炎の主な原因は、不十分なメンテナンスです。インプラントでは治療が終わった後も定期的にメンテナンスを受ける必要がありますが、それを怠ると人工歯やアバットメントの周囲に汚れが溜まるようになり、歯周病を発症します。
【原因2】歯周病の治療が不十分
もうすでに歯周病を発症している人は、適切な治療を受けるようにしましょう。歯周病は、痛みなどの強い症状が現れるまでに時間がかかるため、気付いた頃には重症化していることも珍しくありません。歯周病の治療が不十分だと、インプラント周囲炎が進行し、人工歯根の脱落という最悪の結果を招いてしまいます。
【原因3】治療室の衛生管理が不徹底
インプラント周囲炎は、歯科医院の治療室が不衛生である場合も原因となり得ます。術中の感染対策を徹底し、治療室の衛生管理が行き届いている歯科医院を選ぶことが大切です。
③痛みや腫れが長期間にわたって続く
インプラント治療の痛みや腫れは、手術から2~3日をピークに1週間程度で治まります。痛みや腫れ、しびれなどが2~3週間経っても治まらない場合は何らかの異常が疑われます。
【原因1】適切に埋め込まれていない
インプラントが適切に埋め込まれておらず、神経を損傷しているようなケースでは、痛みや腫れ、しびれなどが長期にわたって続くことがあります。
【原因2】細菌に感染している
インプラントを埋入した部位に細菌感染が起こっている場合も痛みなどの症状が長引きやすいです。細菌感染は術中・術後の両方にリスクがある点に注意しなければなりません。
④人工歯が破損あるいは外れる
上部構造である人工歯の破損・脱落もインプラントの失敗例のひとつとして挙げられます。
【原因1】嚙み合わせが適切でない
人工歯の高さが高すぎたり、低すぎたりするなどの理由で噛み合わせが合っていないと、噛んだ時の力が過剰にかかり、破損や脱落を招きます。
【原因2】アパットメントの締め付けが不十分
人工歯根と人工歯を連結するアバットメントは、ネジによって固定されています。そのネジの締め付けが不十分だと人工歯が不安定な状態となり、破損や脱落を招きます。
インプラント治療で起きた死亡事故
インプラント手術では過去に死亡事故が起こっています。
メディアでも広く報道されたため、「インプラントは怖い治療」というネガティブなイメージを持たれた方も多いことでしょう。
2007年東京都の歯科医院で起こった死亡事故は、オトガイ下動脈や舌下動脈の位置を歯科用CTで正確に把握していなかったことが原因となっています。その結果、手術中に動脈を損傷。大量出血を招き、患者さんは窒息して亡くなられました。
インプラント治療には、こうしたリスクを伴うことを理解しておく必要はありますが、極めて稀な例であることは間違いありません。多くの歯科医院は、事前の画像診断を精密に行い、手術中のリスクも限りなくゼロに近付けるよう努力しているものなのです。