インプラント治療は痛い?手術中と手術後に分けて解説
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インプラント治療は外科手術を伴うことから、痛みに不安を感じている方が多いようです。そこで今回は、インプラント治療の痛みについて、手術中と手術後に分けて詳しく解説します。
【手法別】インプラント手術中の痛み
インプラント手術では、原則として始めに「局所麻酔」を施します。虫歯治療でも用いられる麻酔で、歯茎などの感覚が麻痺するため、手術中に痛みを感じることはほとんどなくなります。局所麻酔で注射を刺す痛みも「表面麻酔」によって軽減でき、術前から術中の痛みは皆無に等しいと言っても過言ではないでしょう。それでも不安な方には、鎮静剤を使った麻酔処置もご用意しておりますので、遠慮なくお申しつけください。
手術中の痛みはほとんどないとはいえ、インプラント治療では歯茎をメスで切開し、顎の骨にドリルで穴を開けるという手術を実施するので、麻酔が切れた後はそれなりの痛みが生じる点に注意が必要です。治療の手法によって痛みが異なるため、それぞれの手法別の痛みについてこちらでは解説します。
もちろん、術後には痛み止めや腫れ止めなどを処方いたしますので、麻酔が切れた後の痛みや腫れをコントロールすることは可能です。
手法①骨の移植
インプラントは、チタン製の人工歯根と顎の骨とを結合させる治療法なので、骨の状態が悪い場合は事前の処置が必要となります。専門的には「骨移植」と呼ばれる方法で、足りない骨を補います。
骨移植には、自分の骨を移植する「自家骨移植」と人工骨を移植する「人工骨移植」の2つの方法があります。前者の場合は自分の体の別の部位から骨を採取しなければならず、傷口も2か所になり、痛みが生じる部位も多くなります。
手法②歯茎の移植
歯茎の状態が悪い場合も、別の部分の歯茎から組織片を採取し、移植するという事前の処置が必要です。この場合も結果として傷口が2つになるので、痛む部位も増えます。
ちなみに、痛みは歯茎を採取した部位の方が強くなる傾向にあります。
手法③骨造成手術
骨の厚みが不足している部分に“骨を造る”方法です。ソケットリフトやサイナスリフト、GBRなどが代表的で、通常のインプラント手術よりも侵襲が大きくなることから、術後の痛みも比較的強くなります。
手法④無切開無痛手術
フラップレス手術とも言われる術式で、その名の通り歯茎をメスで大きく切開する必要がありません。インプラントを埋め込む部位には、専用のパンチで小さな穴を開けるだけなので、傷口が小さく、術後の痛みも弱くなっています。抜糸が不要になる点も大きなメリットといえます。
インプラント手術と静脈内鎮静法
インプラント手術の痛みは、虫歯治療でも使われる局所麻酔でコントロール可能ですが、それでも不安な方には「静脈内鎮静法」がおすすめです。
腕の血管から鎮静剤を投与することで、半分眠ったような状態となります。少し特殊な麻酔なのですべての歯科医院が対応しているわけではない点に注意が必要です。
静脈内鎮静法には「健忘効果(けんぼうこうか)」という、その時の記憶が残りにくくなる効果も期待でき、手術が終わった後には何をしていたのかを忘れてしまう人も珍しくありません。また、手術に伴う怖い記憶も残らない人も多いです。
インプラントの手術後の痛み
痛み・腫れが続く期間
上述したように、インプラント手術には歯茎の切開や骨に穴を開ける処置を伴うことから、手術後に相応の痛みや腫れが生じます。手術のために施した局所麻酔の効果が切れた時点で痛みがやってきますので、適切なタイミングで痛み止めを飲むようにしましょう。
手術した部位は、痛みだけでなく腫れも伴うため、手術後に処方された腫れ止めも歯科医師の指示通りに飲むことが大切です。インプラント手術後の痛みや腫れは、2~3日でピークに達するのが一般的で、長くても1~2週間程度しか継続しません。それ以上痛みや腫れが続く場合は何らかの異常が疑われるため、主治医に診てもらう必要が出てきます。
手術後の感染症リスク
インプラントの人工歯根には、生体親和性の高いチタンが使われていますが、天然歯と比較すると粘膜との結合が弱く、感染症リスクもやや高くなっています。とくに「インプラント周囲炎」というインプラント特有の歯周病には十分に注意しなければなりません。インプラントした部位の歯茎が腫れている、インプラントがグラグラ動くようになった場合は、インプラント周囲炎になった可能性が考えられますので、早急に歯科を受診しましょう。インプラント周囲炎を重症化させると顎の骨が破壊され、最終的には人工歯根が脱落してしまいます。
インプラントの手術後の痛みをできる限り抑える方法
次に挙げる3つの点に気を付けると、インプラント手術後の痛みを軽減しやすくなります。
方法①飲食物を制限する
インプラント手術後は、まだ麻酔が効いている状態なので、冷たいものや熱いものを感じ分けることができません。極端に冷たい物や熱いものを口にすると、口腔粘膜を傷めてしまうため、しばらくは水だけ飲むようにしましょう。数時間もすると麻酔の効果が切れますが、それでもお口の中は傷を負った状態と同じであり、刺激物は避ける必要があります。少なくとも手術から2~3日はあまり噛まずに飲み込めるお粥などで栄養を摂り、飲酒も控えるようにしてください。
方法②お風呂を制限する
熱い湯船に浸かると、全身の血行が良くなり、傷口が開いてしまいます。止血した部位から再び出血してしまうこともありますので、インプラント手術後1~2日はシャワーだけで済ませるようにしてください。シャワーも熱いお湯ではなく、ぬるいお湯で体を洗うことが大切です。熱いお湯を浴びると代謝が上がり、腫れがひどくなるここともあるため十分な注意が必要です。
方法③運動を制限する
運動も傷口を開き、治りを悪くする原因となるため、インプラント手術後1週間は控えるようにしてください。軽いジョギング程度であれば手術後2~3日から始めても問題ありませんが、万全を期すのであれば1週間は安静に過ごしましょう。
お仕事に関しても体を激しく動かす業務は、1週間程度休んだ方がいいでしょう。この点は事前に歯科医師と相談しながら決めていくのが良いです。デスクワーク中心のお仕事であれば、とくに問題はありません。
手術後にこのような痛みがある場合は要注意
インプラント手術後に以下のような症状が現れている場合は注意が必要ですので、歯科医院に連絡しましょう。
- 痛み止めが効かないほど強い痛みが生じている
- 1週間経っても症状が治まらず、むしろ痛みが強くなっている
- 上顎のインプラント手術後に鼻から血や膿が出てきた
- 下顎のインプラント手術後に唇がしびれたり、よだれが垂れたりするようになった
痛みは、人によって感じ方が大きく異なるため、何が正常で何が異常なのかを判断しにくいのが現実です。ただ、上述したような症状が認められる場合は、何らかの異常が生じている可能性が高いため、まずは歯科医院に相談しましょう。抜糸をした後に上記の症状が現れた場合も同様です。