インプラントにまつわる様々な種類:構造から材質まで徹底解説

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歯科コラム/2022年11月15日

インプラントにまつわる様々な種類:構造から材質まで徹底解説

インプラントは失った歯を補う「補綴装置(ほてつそうち)」ですが、従来のブリッジや入れ歯とは大きく異なる点が多々あります。種類もいくつかあり、構造から材質までバリエーションが豊富であることから、それぞれどのような特徴があるのか知りたい方も多いのではないでしょうか。今回はそんなインプラントにまつわるさまざまな種類や構造について詳しく解説します。

インプラントの基本的な構造

インプラントの構造

インプラントは基本的に、上部構造アバットメントインプラント体の3つから構成されています。

構造①上部構造(人工歯)

インプラントの上部構造

インプラントの上部構造とは、ブリッジや入れ歯における「人工歯」に相当します。インプラントの構造の中では唯一、口腔に露出するパーツであるため審美性に優れたセラミックを使用することが多いです。いわゆる“オールセラミック”なら、天然歯の色調や光沢、透明感を忠実に再現できることから、治療後は天然歯列と自然に調和します。何よりインプラントには「人工歯根」という天然歯とほぼ同じ土台が存在しており、ブリッジや入れ歯よりも自然に仕上げることが可能となっています。

構造②アバットメント

インプラントのアバットメント

アバットメントは、人工歯根と上部構造を連結するためのパーツです。とても小さく、連結したあとは人工歯根および上部構造と一体化します。アバットメントは他にも上部構造の高さや角度を調節する役割も担っていますが、元からインプラント体を一体化しているタイプもあるため、種類によって期待できる効果も変わってくるのが現実です。ちなみに、インプラント体とアバットメントが一体化しているものを「ワンピースタイプ」と呼んでいて、標準的な「ツーピースタイプ」よりも価格が安くなっています。

構造③インプラント体

インプラント体

インプラント体は、この治療法の要となる「人工歯根」です。専門的には「フィクスチャー」と呼ばれることもあります。基本的にはネジのような形をしており、専用のドライバーを使って顎の骨に埋め込みます。材質はチタンまたはチタン合金がスタンダードで、インプラント体の直径は3~5mm、長さは6~18mm程度が目安となります。患者さまの顎の状態などを考慮して最適なサイズのインプラント体を選択します。チタンやチタン合金が使われる理由は、身体への安全性です。チタンは金属アレルギーが起こりにくい材料なので、古くから人工関節や心臓のペースメーカーの素材として広く活用されています。腐食も起こりにくいため、顎の骨に埋め込んでもトラブルが起こることはほとんどありません。さらにチタンは、顎の骨と結合する現象が確認されており、噛んだ時の力を支える人工歯根の材質としてはうってつけといえるでしょう。

インプラント体の形状

人工歯根であるインプラント体の形状は、スクリュータイプ・シリンダータイプ・バスケットタイプの3つに分けられます。

形状①スクリュータイプ

スクリュータイプはネジのような形状のインプラント体で、現在のインプラント治療の主流となっています。板にネジを埋め込むのと同じ要領で顎骨へと埋入できることから、固定しやすく、安定性が高いのが特徴です。特別な理由がなければ、スクリュータイプを選択するのが一般的です。

形状②シリンダータイプ

シリンダータイプとは、文字通り円筒(シリンダー)状の人工歯根でスクリュータイプのようならせん状の切れ込みは入っていません。顎に埋め込む際にはハンマーのような器具で打ちつけるため、埋入処置自体はとてもシンプルです。ただ、スクリュータイプと比べると表面積が小さく、顎骨との結合も弱くなるというデメリットを伴います。現在でも一部の症例で使われているインプラント体です。

形状③バスケットタイプ

バスケットタイプとは、中心部に空洞が存在しているインプラント体です。空洞には骨の一部を埋め入れることが可能であり、理論上は他のインプラント体よりも強固な結合が得られます。ただし、高度な技術を要するため実用的ではなく、現在はほとんど使用されていないインプラント体となっています。

インプラントのタイプ

インプラントの構造には、ワンピースタイプとツーピースタイプの2つがあります。

タイプ①ワンピースタイプ

ワンピースタイプとは、人工歯根であるインプラント体と連結装置であるアバットメントが一体化しているインプラントです。手術が1回で済むため、患者さまの心身にかかる負担を最小限に抑えられます。ただ、ワンピースタイプは、顎の骨の状態が良くなければ適応できませんし、アバットメントが故障した際はインプラント体ごと撤去しなければならないというデメリットを伴う点に注意しなければなりません。特別な理由がない限り、基本的にはツーピースタイプを選択した方が良いといえます。

タイプ②ツーピースタイプ

ツーピースタイプは、インプラント体とアバットメントが分離しているインプラントです。ツーピースタイプでは原則として2回の手術が必要となりますが、アバットメントが故障してもインプラント体は残せたり、患者さまの歯並びやお口の状態に合わせて、最善といえるパーツを選択することが可能であったりするため、現状はツーピースタイプが主流となっています。

治療回数によって採用するタイプが異なる

インプラントのタイプは、治療回数によって決定することがあります。手術を1回だけ行う「1回法」では、人工歯根とアバットメントが一体化したワンピースタイプが適しており、手術を2回に分ける「2回法」は2つのパーツに分離したツーピースタイプが適しています。ちなみに、ツーピースタイプは原則として2回法に適応されますが、1回法で使用することも可能です。

どちらを選択するかは、精密検査の結果をもとに、歯科医師が判断します。ワンピースタイプとツーピースタイプでは、審美性や顎の骨への結合という観点で大きな違いは見られないため、安全面や機能面を重視して決定が下されます。上部構造や費用の面で検討するケースは稀といえるでしょう。

インプラントに使用される材質

インプラントを構成する各パーツには、それぞれ以下のような材質が使用されます。

上部構造に使用される材質

人工歯にあたる上部構造には、オールセラミック・ジルコニアセラミック・ハイブリッドセラミックのいずれかを使用するのが一般的です。材料はすべてセラミックで、白い歯を装着できることに変わりはありませんが、特徴はそれぞれで少しずつ異なります。

オールセラミック

歯科治療で用いる材質の中で最も美しいと言っても過言ではなく、高い審美性が要求される前歯のインプラントに最適です。天然歯の色調や質感、光沢まで忠実に再現できることから、治療後はどの部位にインプラントを入れたのかわからなくなるくらいです。ただ、強度においてはジルコニアセラミックに劣るため、歯ぎしりや食いしばりの習慣があったり、噛む力がもともと強かったりする場合は、ジルコニアの方が適しています。

ジルコニアセラミック

人工ダイヤモンドとも呼ばれるセラミックで、金属に匹敵するほどの強度を誇ります。噛む力が強い方にも問題なく適応できます。ジルコニアセラミックも白くてきれいな材料なのですが、透明度が低く、前歯に適応すると違和感が生じてしまうことも珍しくありません。ですから、審美性を追求するのであれば、オールセラミックの方が適しています。

ハイブリッドセラミック

歯科用プラスチックであるレジンとセラミックを混ぜ合わせた材料で、オールセラミックやジルコニアセラミックよりも安価である点が最大のメリットです。その一方、審美性や強度は標準的なセラミックに劣ります。また、純粋なセラミックよりも汚れが付着しやすく、歯茎の粘膜に炎症を起こしやすいという欠点があります。

これらはすべてセラミックでできているため、極端に強い力がかかると割れることがあります。歯ぎしり・食いしばりなどの悪習癖がなおらない患者さまで、ジルコニアセラミックでも対応できない場合は、金属材料を使うこともあります。

アバットメントに使用される材質

連結装置であるアバットメントの材質は、その他のパーツと比べてバリエーションが豊富です。一般的には、純チタン・チタン合金・金合金・セラミックの中から選択することになりますが、インプラント体と同じメーカーの同じ規格でなければなりません。
なお、1回法の手術に使われるワンピースタイプの場合は、インプラント体とアバットメントが一体化しているので、材質は同じです。

インプラント体に使用される材質

インプラント体に使用される材料としては、主に純チタンとチタン合金の2種類が挙げられます。
昨今、ハイドロキシアパタイト(骨や歯を構成する物質)を使用したインプラント体も普及し始めていますが、これはチタンの表面をハイドロキシアパタイトでコーティングしたものです。

純チタンやチタン合金の他に、金属アレルギーの心配がある方にお勧めされているのがジルコニア製のインプラントです。
ジルコニアインプラントは文字通りジルコニアで作られており、正真正銘のメタルフリーインプラントではありますが、適応の範囲が狭かったり、装置としての歴史が浅かったりするため、普及するにはまだ時間がかかることでしょう。そもそも、ジルコニアインプラントはまだ国内で承認されておらず、対応している歯科医院もごく一部に限られます。

インプラントの治療法

インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込むという点において共通していますが、治療法によって上部構造の種類や装着の仕方、噛めるようになるタイミングが異なります。

治療法①即時荷重法

即時荷重法(そくじかじゅうほう)とは、人工歯根を埋め込んだ直後に仮歯を装着する治療法です。標準的なインプラント治療では、人工歯根と顎の骨が結合するまで3~6ヵ月程度待機するため、治療した部位で噛めるようになるには数ヵ月を要するのですが、即時荷重法なら手術したその日からインプラントに荷重をかけることができます。ただし、装着するのはあくまで仮歯であり、人工歯根の状態も万全ではありません。その点も考慮した上で、ものを噛んだ際の負荷が大きくなりすぎないように注意が必要です。また、即時荷重法は顎の骨がしっかりしている症例のみに適応可能となっています。

治療法②All-on-4(オールオンフォー)

All-on-4(オールオンフォー)とは、すべての歯を失った症例に適応されるインプラントで、その名の通りすべての人工歯(オール)を4本の人工歯根で支える(オンフォー)治療法です。通常、インプラントは1本の喪失歯に対して1本の人工歯根を埋め込むことから、すべての歯を失った症例にその理論を適応すると、治療にかかる費用や患者さまのお口にかかる負担は極めて大きくなります。オールオンフォーであれば基本的には4本の人工歯根の埋入で済むため、患者さまの心身および経済的負担を大幅に減らすことが可能となります。ただし、顎の骨の状態が悪い場合はオールオンフォーを適応できなかったり、必要となる人工歯根の数が増えたりするため、最終的な治療方針は精密検査を実施してみなければお伝えすることができません。

治療法③人工歯の直接接続

インプラントには、人工歯根と上部構造を直接接続する治療法もあります。つまり、連結装置であるアバットメントを使用せず、歯科用接着剤やスクリューを用いることで上部構造を固定するのです。上部構造と人工歯根が一体化するため、その結果、トラブルが生じた際の処置方法の選択肢が狭まるという大きなデメリットを伴います。ですから、現状は人工歯の直接接続を行うケースは極めて稀といえます。

表面加工処理の方法

最後は、人工歯根の表面加工処理についてです。チタン製の人工歯根の表面にさまざまな加工を加えることで、顎の骨に固定しやすくなります。

表面加工処理①機械研磨

機械研磨とは、専用の機械を使って人工歯根の表面を滑らかに研磨する方法です。人工歯根の表面に不要な凹凸があると、骨に対して悪影響を及ぼすことがあるため、事前にならしておきます。現在では主に人工歯根のネックの部分のみ研磨します。

表面加工処理②酸エッチング

酸エッチングとは、塩酸や硫酸、フッ化水素酸などを用いて人工歯根に粗い面を付与する方法です。適切な部位に凹凸が形成されることで、骨としっかり結合するようになります。

表面加工処理③サンドブラスト

サンドブラストも酸エッチングと同様、人工歯根の表面を粗くする処理ですが、使用するのは酸ではなく細かい砂のような物質です。チタン表面に砂を高圧で噴き付けることで、酸化膜を消失させ、骨との結合を高めます。

表面加工処理④ハイドロキシアパタイト

ハイドロキシアパタイトは、骨や歯を構成する物質です。人工歯根の表面にハイドロキシアパタイトの粉末を噴き付けてコーティングします。その結果、生化学的にかなり早い段階で、人工歯根と骨が強く結合されます。

まとめ

このように、一言でインプラントと言っても人工歯根の形状や材質、上部構造に用いられる素材にはバリエーションがあります。標準的なケースでは自ずと選択肢も絞られてきますが、それぞれのニーズに合った治療法や材質を選ぶことも十分に可能です。そんなインプラントの種類や構造、材質についてもっと詳しく知りたいという方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。インプラント治療の診療実績が豊富な歯科医師がわかりやすくご説明します。