初期の虫歯は治療した方が良い?初期虫歯の症状と対処法を解説
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虫歯を治すためには、歯を電動のドリルで削る必要があります。歯質の中に入り込んだ虫歯菌は、歯ブラシによる歯磨きではもちろん、薬剤によっても取り除くことが難しいからです。けれども、初期の虫歯に関しては、歯を削るなどの積極的な治療が必要ないこともあります。ここではそんな初期の虫歯の症状や対処方法についてわかりやすく解説します。
虫歯の原因
初期の虫歯について知る前に、まずは虫歯になる根本的な原因を理解しておくことが大切です。
虫歯は細菌感染症の一種
意外に忘れられがちですが、虫歯は細菌への感染によって発症する病気の一種です。いわゆる“細菌感染症”ですね。風邪や胃腸炎なども細菌が原因となって発症することもあるため、もしかしたら虫歯も自然に治るのでは?と思われる方もいらっしゃることでしょう。それは大きな間違いと言わざるを得ません。虫歯は自然治癒せず、放置すると症状がどんどん進行していく病気だからです。ただし、初期の虫歯は例外であり、歯を削らずに治せることもあります。その点は後ほど詳しく解説します。
歯の表面の歯垢で細菌が繁殖する
虫歯の原因となる細菌は、歯の表面に形成された歯垢(プラーク)を住みかとして繁殖します。歯垢は、白くて軟らかく、一見するとそれほど汚いものには見えませんが、1gあたり1000億個の細菌が含まれています。お口の中は、肛門よりも細菌の数が多い(=汚い)、という表現がされることがありますが、あながち間違いではないのです。とはいえ、細菌の数が多くても、善玉菌が占める割合が多ければ、必ずしも不潔であるとはいえない点にご注意ください。
初期虫歯の状態
初期の虫歯は、“歯を削る”などの積極的な歯科治療が不要となることもあるのですが、そもそもどのような状態なのか気になりますよね。
歯の内部のエナメル質が溶け出している状態
歯に穴はあいていない
初期の虫歯は、歯の表面に穴が開いていません。舌で触ってみても、健全な歯と同様ツルツルしています。これは一般的な虫歯と最も大きく異なる点です。少しでも穴があいてしまったら、初期の虫歯ではなくなります。
痛みはない
初期の虫歯に痛みはありません。歯に穴があいていないので、歯の神経が外からの刺激を受けることもないからです。
歯の表面が白く濁っている
初期の虫歯では、歯の表面に白いシミが認められます。専門的には「白濁(はくだく)」や「白斑(はくはん)」と呼ばれるもので、歯垢が付着しているものと勘違いされている方もいらっしゃるかもしれません。気になる方は、鏡でご確認ください。この歯の表面の白いシミは、エナメル質の脱灰現象によって生じます。
変色は表層下脱灰によるもの
これまた難しい言葉なのですが、初期の虫歯でエナメル質が溶け出す現象を「表層下脱灰(ひょうそうかだっかい)」といいます。“溶け出す”と表現されると、もうすでに歯に穴があいているように思えますが、この段階ではまだ表層下(=歯の内部)での脱灰に過ぎません。つまり、歯の中だけでエナメル質が溶け出しているのが初期の虫歯の正体なのです。
健康には害がない状態?
上述したように、初期の虫歯の段階であれば、健康を大きく害することはありません。あえていうなら、白いシミによる審美障害くらいでしょうか。ただ、虫歯は放置すると徐々に進行していく病気なので、いずれは健康に害が及ぶ状態となります。唾液による石灰化だけで状態が良くなることもありますが、基本的には歯科医院で適切な処置を受けることがすすめられます。
初期虫歯の治療法
初期の虫歯は、歯科医師であれば簡単に発見することができます。3ヶ月に1回程度の頻度で定期検診に来ていただければ、初期虫歯の段階で発見するのも難しくないのです。もちろん、毎日鏡で歯の状態を確認していれば、ご自身で発見することもできます。上述した症状を参考にして、日々セルフチェックしていきましょう。
初期の虫歯が認められたら、通常の虫歯治療とは異なる処置法で対処します。
治療法①ブラッシング指導
正しい歯磨きの方法を身に付けていただくために、ブラッシング指導を実施します。自己流のまま歯磨きしていると、どうしても磨き残しが生じて、歯垢が溜まってしまうからです。歯磨きのプロフェッショナルである歯科衛生士からご自身にとって最適といえるブラッシング方法を学び、日々のケアで実践しましょう。とくに奥歯の磨き残しにはご注意ください。その他、ブラッシング指導では、唾液による抗菌作用や自浄作用、再石灰化作用などにういても学ぶことができますよ。
治療法②PMTC
歯のクリーニングであるPMTCは、歯科医院でなければ受けることができません。歯の表面に付着した歯垢はもちろん、歯ブラシによるブラッシングでは取り除けないバイオフィルムやステイン、歯石なども一掃できます。
治療法③フッ素塗布
初期の虫歯治療で最も重要な処置のひとつが「フッ素塗布」です。初期の虫歯では、エナメル質の内部に脱灰が起こっている状態であり、フッ素による再石灰化作用が有効だからです。
フッ素には石灰化を促す作用があることは皆さんもよくご存知でしょう。ただし、エナメル質の表層下脱灰によって生じた白いシミは、フッ素で消せるわけではありません。エナメル質がそれ以上溶け出してしまうのを防ぐのがフッ素であり、見た目まで元の状態に戻すことは不可能といえます。ちなみに、「シーラント」という処置も初期の虫歯に有効ですが、それはどちらかというと“予防”に含まれますので、後ほど詳しく解説します。
初期虫歯の予防法
初期虫歯は、白いシミができ、放置すると本格的な虫歯へと進行するため、可能な限り予防するのが賢明です。
予防法①丁寧な歯磨き
初期の虫歯は、丁寧な歯磨きによって予防できます。ブラッシング指導によって学んだ方法を毎日の歯磨きに生かしていきましょう。1歯1歯丁寧に磨くことで、歯垢や歯石が溜まることもなくなります。
予防法②長時間口の中に食べ物を入れない
ダラダラと食事をする習慣があると、初期虫歯が発生しやすいです。長時間お口の中に食べ物があると、虫歯菌の活動が活発化してしまいます。食べ物はよく噛んで、必要以上に時間をかけないことが大切です。間食の回数が多くなることでも初期の虫歯のリスクが上昇し、本格的な虫歯の段階へと進行しやすくなるため要注意です。
予防法③シーラント
シーラントは、奥歯の溝など食べかす・歯垢が溜まりやすい部位にプラスチック(レジン)を詰める予防処置です。歯の表面が滑らかになるので、歯垢が溜まらず初期の虫歯予防に寄与します。一般的には、乳歯の奥歯や生えたばかりの永久歯で行われます。
シーラントの治療手順
歯にプラスチックを埋めるとなると、歯を削ったり、処置に痛みを伴ったりしそうなものなので、不安に感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。その点はご安心ください。シーラントは、歯の表面に刺激性のない薬剤を塗布してジェル状のレジンを流し込み、光で固めるだけの処置です。痛みや不快感を伴うことはまずありません。当然ですが歯を削る必要もありません。10分程度で終わる極めてシンプルな処置です。
予防法④定期検診
定期的に歯科検診を受けることでも、初期の虫歯は予防できます。3ヶ月に1回程度の頻度で検診を受診すれば、初期の虫歯を効率良く予防することが可能です。